雪だー
いったいここはどこなんだ?というような景色ですね…。
「シュガータイム」
大学4年生の主人公かおるの失恋ストーリー…と書くと全然イメージが違うなぁ(笑。小川洋子さんの本です。
主人公が原因不明の止まらない食欲に最初悩んでいたり (でも途中からすっかり日常化してしまったりする・笑)、下垂体性小人症の弟が出てきたり、主人公の彼氏は不能だったり (しかし彼の場合積極的不能なのだろう) と、小川さんの作品はどこか特別な人がいつも出てきますね。前に読んだ「博士の愛した数式」でもそうでした。病院に勤めていたという経歴も関係があるのだろうし、解説で林真理子さんが書いているように「彼女はフリークス好きなのだ」ということなのかもしれない。とはいえ同情的だったり差別的だったりするわけではなく、彼らの存在をごく自然に感じられるところは小川さんの魅力と言えるかもしれない。
この話はマリ・クレール誌に連載されていたそうで、そのせいかラストシーンではまるでとってつけたように「このすばらしい青春の日々は二度とこないのだっ!」みたいな展開があるのですが、林真理子さんも書かれているように僕もこれはよけいな気がするなぁ(笑。あえて作中の人物にあのようなせりふを言わせなくても、気まずくなった彼氏と暑い街中を歩きながらマイナーな美術館にふらりと入ったりする描写や、彼の疑惑の女の家を友人と二人で探し歩くシーンなんかで十分青春感は堪能できました。というか俺的リアリティありすぎるんですけど、これ(笑。
「STAYラブリー 少年」
西炯子さんの STAY シリーズの新刊です。今回は続き物なんですね。相変わらず佐藤くんいい味出してます。山王さんもかわいい。
この漫画を読んでて思ったんですが、この漫画の主人公の佐藤くんのような、「アホだしむかつくし鼻持ちならないけどどこか愛すべきキャラクター」って、小説ではあんまり見かけたことがないような気がする。小説の方がキャラクターと読者の距離が近いせいか、そういうキャラクターが例えば成長するような物語でも、もっとイタい描写になってしまうことが多いような。漫画や映画のように、ちょっと離れたところから眺めるような視点、彼のイタさが肌に刺さらず、どちらかというと人間としてのおかしみの方が感じられるくらいの距離を作りづらいのかなぁ。
それにしても、西さんはアホな少年を書かせると非常に秀逸ですな(笑。
「プレイヤー・ピアノ」
大きな活字で復刊されたものが平積みになっていたので買ってみました。カート・ヴォネガット・ジュニア著。
実はこの本を読み終わったのは上に書いた2冊よりも前なんですが、うーん、なんというか、あんまり面白くなかった。内容的にはついこのあいだ読んだハックスリーの「すばらしい新世界」のような行き過ぎたテクノロジーによる反ユートピア小説で、そういった体制をひっくり返すべく革命をもくろむ組織が出てきたりとちょっと「月は無慈悲な夜の女王」風なところもあったりするんですが、煮え切らずに終わっちゃうお話。そもそも主人公がすごく日和見主義者で、いや、実は確たる信念があるのかもしれないんだけど、どうにもふにゃふにゃしているように見えちゃう。しかも奥さんと全然意思疎通出来てないのが丸わかりなのにずっと「分かり合えてる」と思いこんでたり。そういう、主人公のなんだか一つ抜けてるようなところが物語の伏線なんだと思ってずっと読んでたんですが、結局最後まで何の関連もなく、ほんとにただの「抜けてる人」で終わってしまった。この本を読むなら「すばらしい〜」と「月は〜」を読むことをお勧めしまする。