eto さんのところより。カニグズバーグさんのお話がとても読みたくなってしまいました。
2003年2月、ふとしたことから一冊の岩波少年文庫を読みはじめ、愕然としました。その翻訳は、アメリカの児童文学の作家、E.L. カニグズバーグの原作とは、あまりにも印象の違う、辻褄の合わない、わかりにくいものだったのです。
なぜ? 疑問が心を離れず、それから半年、暇さえあれば辞書を引き、原文と訳文を読み比べ、友人たちにブースカ言い続け. . . . . 8月に、岩波書店と、原作者のカニグズバーグに手紙を書きました。それが、私の小さな冒険のはじまりでした。
昔は単なる一読者がこういうことを思ったとしても、(そうとう極端な例でない限り) なかなか版元や翻訳者まで声が届くことはなかったように思いますが、この件しかり、先日の指輪物語の字幕の件しかり、個人レベルでもムーブメントを起こすことが可能になってきていることを実感しますね。不満や疑問を感じた人がそのことを公にし、賛同する人が多ければそれが大きな動きとなっていく、という構造は、なんとなく Linux 等のオープンソースソフトウェアの成長過程を見るようです。基本的には同じことなんだろうな。
しかし、インターネットの持つこの増幅作用は必ずしも良い方向にばかり働くわけじゃない、ってことも肝に命じておかないと。
「リトル・フォレスト(1)」
アフタヌーンで連載中の五十嵐大介さんの本。SAK に借りて読みました。
「胃の中の蛙」の話とか、僕にもそういうところがあるせいか、おかあさんがとてもいいと思った。絵もとても綺麗だし、ストーリーも自然で好き。五十嵐さんの他の本も読んでみたくなりました。
ところでこの本は「スロー・フード・コミックス」なんだそうですが (なんて流行言葉なコピーなんだ!)、この話にしても「ヨコハマ買い出し紀行」にしても、アフタヌーンって雑誌はこんな話ばっかりなのか?と心配になってしまいますよ。SAK によればもっと普通のマンガもあるよ、とのことですが…。
「高い城の男」
もう一冊くらい読みたいと思って買ってみたフィリップ・K・ディックさんの本。第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した世界で、連合国側が勝利した場合の未来を書いた小説がベストセラーとなって…というお話。
彼の本の中ではかなり人気の高いものの一つ、とあとがきで書かれていましたが、我々の現実とは異なる世界に暮らす日本領事、職人、商人などの登場人物の、その特異な世界での感じ方や行動についてしっかり書かれているのがその理由とか。確かに田上さんのパートは (僕も日本人のせいか) 結構感情移入してたかも。
しかし全体としては今一つピンと来なかったなぁ。彼の本は僕には合わない、ってことなのかな…。
PSP
思い付きネタ2つ。
- PSP = LocationFree?
- [5/12 にも書いた通り](/2004/0512/)、僕はゲーム機として以外の PSP の魅力としては、「CPU リッチ、インターフェイスリッチな汎用メディアプレーヤ」だと思っているわけですが、標準で RoomLink のように家庭内メディアサーバ (VAIO Media サーバとか) につながるクライアント機能があればいいのに…とふと思いました。でもそれって今年の始めに Sony が言っていた「LocationFree (旧 AirBoard)」そのものなんですよね。
- 映像文庫
- 久多良木さんは PSP に搭載されている UMD を、ゲームだけに留まらず映像/音楽の配布メディアとして利用して欲しいと考えているようですが、何も考えずに DVD、CD と同じような価格、コンテンツで売ろうとしても絶対うまくいかないと思うんですよね。そこでふと思い付いたのが、「UMD = 文庫」という位置付け。外で気軽に映像を見る、というスタイルを実現したいなら、価格や商品内容も「気軽」なものにしないと。コンテンツは高くても 1000 円代、出来れば数百円で買えるくらいの価格帯で、書籍の流通も使っちゃったりして。内容も「映画」や「ライブ」のようなヘビーなものばかりじゃなくて (文庫としてそういう過去の名作集のようなものは必須ではありますけど)、例えば NHK の英語でしゃべらナイト!とか、連ドラ、TV アニメなどの短い時間でも気軽に楽しめるようなものをメインで。ちなみに本屋さんで売っている NHK の英会話のテープ (今は CD なのかな?) って、実はかなりよく売れてるんですよね。そんな位置付けのコンテンツを UMD で売ってみると良いんじゃないかなぁ。UMD は当分 PSP でしか再生できないわけですし、いくら H.264 の画質が良いといってもビットレート的にどうしても DVD には劣るわけで、DVD よりも安い価格帯でないと売れるわけがない。
とはいえ、ゲーム以外のコンテンツは結局どれもゲームと競合して、SCEI の主要な収入源であるところの「ライセンス料」を圧迫する可能性があるわけで、一通り普及が進むまでは本気で取り組むことはないでしょうね。ハードの原価が下がってハードだけでも十分儲けが出るようになったら…かな。