「人はなぜエセ科学に騙されるのか」, 「神の子どもたちはみな踊る」
「人はなぜエセ科学に騙されるのか」
「Cosmos」や「コンタクト」、また「核の冬」に関する研究などでも知られるカール・セーガン博士の本です。タイトルからすると、「なぜ騙されるのか」という点を科学的に分析している本と考える人もいるかもしれませんが、そうではなくて、この本は科学的思考法というものの啓蒙書といった趣の本です。単行本時のタイトルは「カール・セーガン 科学と悪霊を語る」で、本書の内容的にはこちらのタイトルの方が良いような。
科学的な (本書の言葉を使えば「懐疑的な」) 見方をすればすぐに分かるようなエセ科学にどうして人は騙されてしまうのか、セーガン博士はもどかしいものを感じながら非常に多くの実例を引きつつ啓蒙していきます。この「非常に多くの実例」が圧巻で、僕は以前に読んだ「と学会」会長山本弘さんの「神は沈黙せず」を思い出しました。
そういえばこの本の中に出てくる「トンデモ話検出キット」って、ちょっと前に 2ch で流行っていた「詭弁のガイドライン」の元ネタなんじゃないかなぁ。アレよりは科学方面に寄っているけど (反証可能性とか)、重なる部分も多い。そういえばデマルコさんの「熊とワルツを」でも引用されていたクリフォード卿の「信仰の倫理 (信念の倫理、とも)」がこの本でも引用されていました。
「神の子どもたちはみな踊る」
前回読んだ「アンダーグラウンド」以降の村上春樹作品を読んでみたくて、この本にしました。「UFOが釧路に降りる」「アイロンのある風景」「神の子どもたちはみな踊る」「タイランド」「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」6編を収録した短編集です。
短編集といっても完全に独立した作品というわけではなくて、全ての作品を「阪神大震災」という通奏低音が貫いています。といっても、確かに震災はそれぞれの物語にとって決定的な要素ではありつつ、しかし直接的には震災のことにふれられることはなく、そういう意味では別に震災でなくとも「地下鉄サリン事件」でも「湾岸戦争」でも何でも良かったのかもしれません<という風にとられてしまう危険性のある作品だと思いました1。
僕としては例えば「UFOが〜」に出てくる奥さんに家出されてしまう中身が空っぽの男の空虚さなどはよく分からないし、「アイロン〜」の最後に主人公がどうしてあのような行動をとってしまうのかも分からない。結局、村上さんの感性を理解できない、ってことなのでしょうか。「タイランド」や「かえるくん〜」、「蜂蜜パイ」は面白かった。