bird「数学ガール」, 「不思議のひと触れ」, 「山へ行く」, 「地平線でダンス」, 出張映画評(2)

「数学ガール」

数学ガール 結城浩著。数学好きの主人公「僕」が、同級生のミルカさん、後輩テトラちゃんと数学の世界を楽しむお話。

実に素敵な本でした。僕の第一印象を一言で表すなら、「とても美しい本だった」でしょうか。「数式をいじるのが趣味」「家族が寝静まった後に一人で数式に取り組む時が至福の時間」という主人公のことを最初は全く理解できなかったんですが、この本を読み進むうち、僕も「数式をいじる」ことの楽しさが少しだけ分かったような気がしました。登場人物たちが式と格闘するさまがちょっとした冒険小説のような趣で、新たな発見で証明が進んだ時などは本当にドキドキしました。

扱われている題材は高校生レベルなんだと思うんですが、その「数式をいじる」ステップをとても丁寧に説明してくれているので、高校生でなくても読めるんじゃないだろうか…と思うくらい、優しい印象があります。一般的に科学の本、特に教科書なんかは、簡単な事でもわざわざ難しく書いてあったりすることがあることを思うと1、このような本はとても貴重なんじゃないかと思いました。

「数学ガール」のユニークな点としては、なんといっても縦糸にそのようなストイックな数学の題材を扱いつつも、横糸として主人公達の心のふれあいを持ってきているところでしょう。頭の固い人だと、「数学の本にどうしてそんな話が必要なんだ」と怒り出したりしそうではありますが(^^;、僕はこの構成をとても自然に感じます。一人で数式と戯れることも楽しいのだろうけれども、やはり他者とコミュニケーションしつつ取り組むことで、そのモチベーションや喜びも何倍にもなると思うのです。そういう素敵な研究仲間のあり方を、この本は自然に見せてくれているように思いました。

「不思議のひと触れ」

不思議のひと触れ シオドア・スタージョン著。SF 界きっての短編の名手、と言われているらしいスタージョン。とはいえ、この本では SF 色はあまり強くなく、ホラーあり、ショートショートあり、ジュブナイルっぽい話あり、ユーモア小説あり (全10編収録) と、多彩なお話が楽しめました。

実はスタージョンを読むのはこれが初めてだったりするんですが、結構フィーリングあうかも。特に表題作の「不思議のひと触れ」や「閉所愛好症」「孤独の円盤」あたりに、特にぐっと来ました。この河出の奇想コレクションからはもう一冊短編集が発刊されているので、買ってみようかしら。

「山へ行く」

山へ行く 萩尾望都著。「ここではないどこか (ANYWHERE BUT HERE)」シリーズの一冊目だそう。全10編を含む短編集です。

これまたいろいろな趣向のお話が含まれる本でしたが、やっぱり萩尾さんの本は面白いなぁ。どの話も面白かったのですが、強いて言えば「ゆれる世界」「ビブラート」「柳の木」あたりが印象に残っています。「ゆれる世界」の、世界の崩壊を防ぐために羽を羽ばたかせられないバタフライ族、という設定には笑った。

「地平線でダンス」

地平線でダンス 1 柏木ハルコ著。あれ?「QUOJUZ2」はどうなったの?と思いつつ。この話はスピリッツで連載しているらしい。今回はエロ成分はほぼナシの模様。

やや、この本もすごく面白かったです。ジャンルで言えば SF。柏木さんが SF?!って感じかもしれないけれど、予想以上にはまっていると思うなぁ。「科学」方面にアンテナを立ててる、という意味で、上の萩尾さんの本とも微妙に共通点を感じたりして (なんて書くとファンに叱られそう。一緒に読んだからだけだろうって?ごもっとも)。「地平線でダンス」という書名と SF という部分で、ちょっとル・グィンなんかも思い出しましたよ。とかなんとかいっても、ストーリー的にはすっごくシンプルな SF どたばたラブコメディなんですが(笑。この先どうなっちゃうんだろう…?と思わせる、ジェットコースターストーリーです。

出張映画評(2)

先週、また出張に行っていたんですが、今回は「ゴーストライダー」「ラブソングができるまで」「バブルへGO!!〜タイムマシンはドラム式〜」「どろろ」の4本の映画を見ました。

今回は総じて不作っぽかったですねぇ。「ラブソングが〜」と「バブルへGO!!」はそこそこ面白かったけれど。

それよりも今回の出張で驚いたのは、行きも帰りもオーバーブッキングのためにビジネスクラスへ格上げしてもらったこと。生まれて初めてのビジネスクラスだったんですが、ありゃー快適ですねぇ。びっくり!

bird「楽園の泉」, Sony MDR-NC22, 「この恋は実らない 1」, 電脳コイル, Courier-imap から Dovecot へ

「楽園の泉」

楽園の泉 アーサー・C・クラーク著。一人のエンジニアが、いわゆる「軌道エレベータ (宇宙エレベータ)」を作り上げるまでの悪戦苦闘を描いた話…と書くと、SF 的なものにあまり興味のない人には面白くない話と思われるかもしれませんが、とんでもない。物語の舞台となるタプロバニーの美しい自然、伝説や、そこに暮らす修行僧とのやり取りなどが物語に素敵な奥行きを与えていて、クラーク作品では珍しい (そうでもない?) 非常にドラマチックな展開もあいまって、とても面白かった。いやはや泣けました…。

ところでこの本を読むと、以前読んだ小川一水著「第六大陸」はこの本の影響を激しく受けていたのかもしれないなぁ、と感じました。お話の全体の流れ、イメージもとても近いですし、「第六大陸」のラストの展開は、あの話だけを読むとはっきりいって「?」なんですが、クラークのこの話との相似を思うと、なるほど、という感じ。

Sony MDR-NC22

ノイズキャンセリングヘッドホン ブラック MDR-NC22 B 僕はナニゲにノイズキャンセリングヘッドフォン (以下、NC ヘッドフォンと略) のファンで、とはいえ一般に NC ヘッドフォンと言えばコレ、と言われている BOSE の QuietComfort シリーズは流石に高くて買えず、これまで Sony の MDR-NC11ASENNHEISER PXC300 と使ってきました。

初めて買った NC ヘッドフォン、Sony の MDR-NC11A はカナル型のヘッドフォンで、ヘッドフォン、というよりもイヤフォンといったほうが良い感じの音で、ケーブルもしょっちゅう絡まるし、使っているときはあまり満足感は高くありませんでした。2〜3年くらい使っていたように思うんですが、最後は左チャネルが断線して鳴らなくなったため、2代目のゼンハへ乗り換えました。ただ、今思うと結構 NC 効果も高かったし違和感も少なく、なかなか良いモデルだったように思います。

2代目のゼンハ PXC300 はカナル型ではなく、オンイヤー型のヘッドフォンです。カナル型やオーバーイヤー型に比べると、オンイヤー型は周囲の音が入って来易いため、聴感上の NC 効果は低め。かつ、Sony のものと比べると NC をかける周波数帯域が狭いのか、ある程度高い音はほぼそのままの音量で聞こえてきます。多少物足りない反面、街中や電車で使う分にはより安全なので Good かも。心理的にストレスの溜まる低い定常音系は綺麗に消してくれます。このヘッドフォンも (今思うと) NC に伴う違和感はとても少なく、使いやすいです。純粋にヘッドフォントしてみると、妙に音が割れやすいのが欠点、かな。高い音が出ないわけではないのですが、Sony のヘッドフォンと比べると周波数特性もずいぶん違う感じで、同じ曲を聴いても結構印象が異なるんですよね。

PXC300 はとてもお気に入りで、通勤時などに毎日のように使っていたんですが、この間海外出張の折に飛行機の中でも使ってみたところ、1) 飛行機の雑音に対する効果は今ひとつで、2) 10時間つけっぱなしにしていたら耳が痛くなってしまいました。やはり眼鏡をかけてオンイヤー型のヘッドフォンをつけ続ける、というのは、いくら側圧弱めの PXC300 といえども厳しいようです。

そこで、主に海外出張用に、再び Sony のカナル型イヤフォンの新型、MDR-NC22 を買ってみました1
今は NC ヘッドフォンにもいろいろ選択肢が増えてきて、必ずしも Sony や BOSE でなくても良かったのですが、いろいろ調べた限り、カナル型 NC イヤフォンではやはりこれが評判よいようでした。

さてその印象は、というと、実はいろいろ残念な点がありました。まず、これまで使ってきた2機種ではほとんど見られなかった、NC 時の違和感が非常に大きかった点。これまでいろいろなブログなどで、「NC をかけると妙な圧迫感がある」というような記述は見たことがあったのですが、自分では感じたことがありませんでした。ところがこの NC22 の場合、確かに圧迫感を感じます。これまで、「気圧が上がるわけでもないのに、圧迫感ってなんじゃらほい」、と思ってたんですが、自分で感じてみてようやくメカニズムが分かりました。NC22 でノイズキャンセルをかけるとある一定の帯域のノイズがキャンセルされるのですが、そのキャンセルのされ具合、左右の耳のキャンセル度合いの違いなどが、電車がトンネルに入ったときや飛行機での上昇中に感じる、いわゆる「気圧が変化して耳がよく聞こえなくなった状態」によく似ているのです。実際には外部の音がそんな風に聞こえるだけで、イヤフォンで流している音楽は正常に聞こえるため、つまり音が流れている間は違和感を感じないのですけれど、無音でイヤフォンだけかけていると、耳が思いっきり誤解している、という感じがします。思わずあくびをしたくなったりして(笑。

もう一つ残念な点は、耳の左右でノイズレベルが大きく違うときに、NC 効果がなくなってしまうことがあることです。電車の中で窓を向いて (つまり進行方向に対し横向きに) 立ち、その状態でトンネルに入ったりするとよく分かります。もう一つよく分かるのは地下鉄のホームで電車が入ってくるときでしょうか。そういうタイミングで NC 効果が一瞬途切れ、外のノイズが急に入ってきます2。NC11A や PXC300 ではそういう現象にはあったことが無かったので、最初初期不良を疑い一回販売店で交換してもらったのですが、新しいものでも全く同じ現象が出ているので、どうもこれは NC22 の特性のようです。気になりだすと結構気になるんですよね。うーむ。

とまぁいろいろありましたが、飛行機用として今後も使っていこうと思っています。

「この恋は実らない 1」

この恋は実らない 1 武富智著。本誌では打ち切りっぽく終了となり、現在単行本書き下ろしとして続いている「EVIL HEART」と比べると、新連載として始まったこちらは、いかにも「ヤンジャン」な感じのお約束てんこ盛り。しかし青年誌、ってのはこんなに H シーン満載でないとダメなんすかね?(^^;。それとも単にこの漫画が「エロ担当」だからかな…。いや、武富さんの書く女性は好きですし、H シーン自体嫌いじゃないのでよいのですが…(^^;3

毎話ほとんど何の脈絡もなくしかし必ず挿入される4エッチシーン以外は、「100人切りのプレイボーイが深窓の令嬢に恋をし真の純情を知る」といった感じの極めてオーソドックスなラブストーリーで、これまでのところの展開はあまりに順調すぎるのでそのうちどんでん返しがあるのでしょうが、今のところはまだ伏線も少なく、どうなっちゃうのかドキドキですナ<「ドキドキ」って…(笑。

電脳コイル

各所で話題の NHK アニメ、「電脳コイル」ですけれど、我が家でも子供たちがどハマリ状態(^^;。一番下の鳥乃なんかは京子ちゃんの影響を受けまくって、しばらく「うんちー!うんちー!」と非常にうるさかったです(笑。
今後の展開がとても楽しみ。

Courier-imap から Dovecot へ

これまで、会社 PC の OS は Debian で、imap サーバとしても Courier-imap を使っていました。そのマシンがリースアップするのを機に買ってもらった新しいマシンには最近流行りの Ubuntu を入れてみたんですが、Ubuntu では標準 imap サーバが Dovecot へ変わっていました。
とはいえ、Maildir 形式でメールを保存していれば Courier から Dovecot への移行は楽チンで、移行用のスクリプトを流すだけで済みます。が、ここで思わぬ落とし穴が。
僕はその、imap サーバ上のメールを Thunderbird で読んでいるのですが、Courier のときに作ったアカウントのまま、Dovedot のメールを読もうとしたところ、いわゆる「受信トレイ」だけは読めたんですが、その他のフォルダの内容が全く読めなくなってしまいました。どうも Thunderbird から見たときのフォルダ構成が両 imap サーバでは微妙に異なるらしい。
しょうがないので Thunderbird 上で新しくもう一つアカウントを作成しなおしてみたところ、無事、それまで見えていた全てのフォルダが読めるようになりました。その後、メールフィルタファイルを移行して無事完了。
Dovecot の印象ですが、設定は超簡単、性能も悪くないですが、メールのフィードは Courier の方が早い感じがしますね。特に、Thunderbird をオフラインにするときの、メールの本文のフィードはちょっと遅いです。

birdあわせて読みたい, カート・ヴォネガット・ジュニア

あわせて読みたい

いつも巡回している有名ブログのあちこちで取り上げられ、今、流行っているようなのでここにもつけてみました。
しかしここと「あわせて読みたい」と紹介されているのは全然知らないサイトばっかりだ…(笑。

カート・ヴォネガット・ジュニア

先日亡くなったカート・ヴォネガット・ジュニアの本を2冊まとめ読み。昔、「プレイヤー・ピアノ」は読んだので、今回は「タイタンの妖女」と「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」を読みました。

タイタンの妖女 一冊目は、とある大富豪があっちゃこっちゃへ引っ張りまわされ大変な目にあう話。SF、と言うよりユーモア小説 (とあとがきにも書いてあった) という趣のこの作品ですが、「プレイヤー・ピアノ」よりは楽しめたと思う。なんだろ、とっても悲惨な境遇の中での救いというか、どん底まで落ちてから価値観がひっくり返るというか、世の中、一面的な見方をしてちゃダメで、もっと多面的に見よう、という思わせるような本でした。それが「ユーモア」の力なのかな。

そういやちょっとお下品なユーモアと、主人公があっちゃこっちゃへ引っ張りまわされる、という展開から、僕は以前読んだルーディ・ラッカーの「フリーウェア」を思い出したりしました。ちょっと似てると思いません?

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを で二冊目。こっちはますます SF とは縁遠くなり、とある大富豪エリオット・ローズウォーターと彼を取り巻くさまざまな人のお話。登場人物がすごく多くて、彼らの他愛のない日常が延々ひたすら語られる、という作品なので、「華麗なるストーリーテリング」といったようなものを求めている人にはきっと耐え難い本なような。ただ、「タイタン〜」同様、その読後感は胸にしみるものでした。

bird「密やかな結晶」, PS3 1.80

「密やかな結晶」

密やかな結晶 小川洋子著。身の回りのものが一つずつ消滅していく「島」での出来事を、小説家である主人公の視点からつづった物語。

消滅、といっても物理的に消えてしまうわけではなくて、ある日突然、人々の心の中からその概念が消えてしまうのです。言ってみれば「死語」のような、しかしそれがもっとドラスティックな変化として起こるのです。しかも、「島」にはその「消滅」をより徹底させるための「秘密警察」なるものも存在し、「島」の住人は日々の消滅と秘密警察双方におびえつつ、それでも毎日けなげに生きているのです。

…というようなある意味突拍子もない設定の本作ですが、解説に書かれている通り、全体のテイストはちょっと「アンネの日記」を彷彿とさせるものがあります。全世界規模でさまざまなものが失われていく世界で、それでもなお人々は助け合いつつ日常を生き続けている。ラストシーンも、明るい日の光の差す、希望を予感させるものながら、その読後感はとても悲しいものでした。

喪失そのものや、にべもなく奪われゆくもの、などについて考えさせられるお話でした。

PS3 1.80

もうすっかり古い話題ですが、先日 PS3 の firmware が 1.80 へバージョンアップしました。
このバージョンでの一番の話題は、なんといっても DVD、PS1/PS2 ゲーム等 SD ソースの HD ディスプレイへの出力時にアップコンバート処理が可能になったこと。ただ、我が家は SD テレビなので関係ないかーと思っていたんですが、ところがビックリ、PS1/PS2 ゲームの設定、「スムージング」を on にすることで、かなりジャギーが低減しました。SD でも効果あるのね。
次なるアップデートでの個人的な期待は、そこそこマトモな Virtual Surround 機能の搭載、かなー。DVD に 5.1ch とか収録されてても、我が家の2スピーカー構成ではまるで宝の持ち腐れですからね。

bird「The Best of Free Design」, 「カラマーゾフの兄弟」

「The Best of Free Design」

The Best of Free Design 飛行機の中で見た映画で使われていた曲が気に入って、この CD を Amazon で買ってみました。輸入盤だからか配達にとても時間がかかり、しかも届けられた CD はケース裸 (ラッピングなし!) で結構ワイルド。まるで中古みたい。でも僕はそういうのあまり気にしないほう。

買ってみて初めて知ったのですが、このアルバムは60年代末〜70年代初めにかけて発表された曲を集めたものだったのですね。70年代初めと言えばちょうど自分が生まれた頃ですよ。ちょっとびっくり。ネットにはあらゆる情報が集まっていて非常に便利ですが、その情報やコンテンツが古いものなのかどうか、というような属性はぱっと見分からないことがありますよね。今回のような例では、そういうフラットネスが非常に幸せなことではあったわけですけれども。

肝心の内容は、というと、とても気に入りました。綺麗なコーラスワークとちょっとマドリガルを思わせるようなコロコロとしたメロディの曲が多くて、まさにツボ。しかしこれだけ古い曲で、かつ今まで生き残っているとすると、比較的隆盛したジャンルだったりするのかな、と思いちょっと調べてみたんですが、なんだか「ソフトロック」とか「ビーチボーイズ」とかいうキーワードに遭遇。個人的にはちょっと「?」な繋がりをしていて、ちょっと不思議&面白かった。普通はどんなところと繋がるんでしょうね?

「カラマーゾフの兄弟」

カラマーゾフの兄弟 上 カラマーゾフの兄弟 中 カラマーゾフの兄弟 下 ご存知ロシアの文豪、ドストエフスキー著。以前読んだ「罪と罰」が思いのほか面白かったので1、ドストエフスキー一番の傑作と言われるこれも読んでみました。これって彼の最後の長編だったんですね。何でも構想では現存するものは第1部で、この後もっとアリョーシャの活躍する第2部があった、というから恐ろしい限り。いや、今のものでも十分長いので…(笑。でも確かに、冒頭でアレクセイが主人公である旨が語られるのに、本編ではかなり存在感が薄ゲだったりする点には、実は第2部があった、という話にも納得させられるところがあります。

さて、肝心の内容は、というと、今回の初読では僕は「罪と罰」ほどにはのめり込めなかったかな。前知識0で読んだので、カラマーゾフ3兄弟の人となりが全く分からず、加えて3人の父親、「あの」フョードルのとんでもない行為に関する記述をいきなりぶつけられて、ハナからバイアスかかりまくりで最初ちっとも感情移入できませんでした(笑。流石に下巻に入る頃にはだいぶん様子も分かってきて、最後の裁判のくだりはかなり没頭して一気に読んでしまいました。エピローグのカテリーナ、アリョーシャのたくらみやアリョーシャの子供たちに対する演説は、とてもすがすがしくて未来への希望にあふれているように感じられました。

一般的には上巻ラストにある、イワンの「大審問官」が白眉、と言われているようですが、天邪鬼な僕は、「そうかなぁ?」という感想。確かに面白い話ではあるのだけれど。キリスト教的な素養がなさ過ぎるのが問題なんだろうか。

「罪と罰」ではあまり感じなかったんですが、この本を読んでいるときに度々、村上春樹の小説を思い出しました。特にイワンのくだりで。ドストエフスキーくらいの文豪になると、ほとんど全ての小説家に影響を与えているといっても過言ではないのでしょうが、思えば村上春樹の小説にはこの本の影響が色濃く出ている感じがしますね。

ところで、この「カラマーゾフの兄弟」は最近新訳が出て話題になっているんですってね。僕が読んだのは旧訳の方ですが、今度機会があったら新訳の方も読んでみたいです2

birdDNS に逆引きが設定されていないホストへの SSH が遅い

DNS に逆引きが設定されていないホストへの SSH が遅い

会社の Ubuntu マシンで、DNS に逆引きが設定されていないホストへの SSH が妙に遅く、なんでだろ?と思っていました。2ch まとめサイトなどでは、IPv6 を disable にしてみては、というような情報がありましたが当方では効果なし。
今日、ちょっと本腰を入れて packet dump なぞを取ってみたところ1、どうもこの Ubuntu マシンが接続前に必死に逆引きを解決しようとして、DNS サーバに聞きに行くだけでなく、mDNS (ポート5353) というプロトコルでも解決を試みている感じ。mDNS ってなんじゃらほい、と思ってググッてみたところ、Multicast DNS のことなんですね。
社内ではそんなもの使わないので、/etc/nsswitch.conf の hosts 行の末尾にあった mdns4 という記述を削除してみると、遅かったホストにもさくさく SSH できるようになりました。
よかったよかった。

bird出張映画評

出張映画評

最近はエコノミーでも機内ストリーミングによる映画が楽しめ、退屈しません1。そんなわけでここのところ出張のたびに、自分では映画館に見に行くことは絶対にないであろう映画を何本か見ていたりします。映画館には見に行かないけど、飛行機の中で見るとなかなか楽しめる作品も多いんですよね。今回も往復で5本見たので、その感想をば。(見た順に書きます。)

ホリディ

キャメロン・ディアス、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、ジャック・ブラック出演のラブ・コメディ。お互い失恋したてで孤独なクリスマス (=「ホリディ」シーズン) を過ごすべく、「ホーム・エクスチェンジ」という驚愕のシステムによってお互いの家を交換した女性二人が、それぞれ未知の土地で素敵な出会いをする、という話。まぁなんというか、ろくでなし男は出てくるけど、全般的には全編これ予定調和、期待通りのラッキーの連続、シュガー・コーティッド・ストーリー、という感じではありますが、ほのぼのほんわかしたい向きには良く出来たラブストーリーなのではないかしら。ケイトがちょっと冴えないイギリス娘を演じているのですが、それが超ハマッてた。あれが地なのかなぁ。ジャック・ブラックは、紹介文での絶賛ほど存在感があったとは思わないけど、なかなかいい味出してる。キャメロン姉さんは相変わらず (<それだけかよ・笑)、それにしてもジュード・ロウは色男だ。「リプリー」や「A.I.」でもすごく印象的だったけど、この映画でも超かっこよかった。ちょっとズルい役(笑。

それでもボクはやってない

PS3 向け HD トレイラーを配っている P-TV で、この映画のスペシャルコンテンツを沢山配信していて、ちょっと前にそれらを見、周防監督って面白い人だなーと思っていたところだったので、2番目はこれを。

いやー恐いですね。誰かが、「現代の日本で痴漢に間違えられそうになった時、とるべき行動は脱兎のごとく逃げ出す事」と書いていましたが、まさにそんな気持ちにさせる映画でした。

143分と実は長い映画なんですけど、見ている間それを全く感じさせないのはさすが。面白おかしい演出も中にはありますが、全体に抑えたトーンで、どちらかに肩入れしすぎることも、感情的になりすぎることなく、現代日本の司法、警察の現場を見つめています。しかし、僕ならいくら一日1万円以上もらえるといっても、あの拘留期間中の扱いには耐えられないかもしれないなぁ。しかも公判が始まって証拠提出が終わるまで保釈不可能だなんて。

タイトルからしてオチのネタばれになってたりしますが、そういう後味の映画であることを含めても、興味深い映画でした。万人向けではないかもしれないけどね。

ここまでが行きの飛行機で見た映画。これ以降が帰りの飛行機で見た映画です。

ロッキー・ザ・ファイナル

60 歳になったロッキーがなぜか2世界チャンピオンとエキシビジョンマッチをすることになり…というその顛末を描いた作品。

いちおーこの作品は「1」にささげるオマージュ、ということになってるみたいで、1で出てきたいろんなものがそのまま、あるいは形を変えて沢山出てきます。熱烈なロッキーファンには結構楽しめるのかも。俺はイマイチだったなぁ。100 分ちょっと、と短めで、ストーリーもどんでん返しはなくストレートなものだからこそ何とか見れた、って感じ。あ、でも、ロッキーが息子を叱り飛ばすジジイの説教シーンはなかなか良かったかも(笑。

この映画で何がひどかったって、僕は日本語吹替版で見たのですが3、その日本人声優のクオリティがとんでもなく低かった事が一番ひどかった。誰の声が、というのでなく、全般的にひどかった。上で書いた「ホリディ」もそういう意味では結構ひどかったんですが、飛行機の映画の吹替え、って、何かイイカゲンに作られていたりするのでしょうかね…?4

しかし、国内では「ザ・ファイナル」なんて名前ですが、英語の原題は単に「ROCKY BALBOA」なんですよね。これが“ファイナル”とは限らない予感…((((;゜Д゜)))))ガクガクブルブル。

デジャブ

デンゼル・ワシントンがまたしても切れモノ捜査官役で出演してて、またかよ、とちょっと言いたくなりましたが、この映画はいわゆるサイコミステリーもの、テロものではなく、実はコテコテの SF なのです。ジャンル的にはタイムパラドックスもの。

ヒッジョウにオーソドックスなタイムパラドックスもののメインストーリー5に、自動車爆弾によるフェリー爆破テロ事件を絡め、しかもハリケーン「カトリーナ」被災直後のニューオーリンズでのロケを敢行して6、全体をちょっと思わせぶりな演出と派手なアクションでまとめた、それなりに楽しめるアクション映画でした。

タイムパラドックスもののお手本どおりに、そのストーリーは基本的に各所にちりばめられた伏線を回収することで成り立っています。あゆみさんのようにそういう「伏線回収型」のストーリーが好きな方には結構お薦めかも。ただそういう意味で言えば、犯人の家でワニに食べられてた人の手は誰のものだったのかが最後までわからなかったとか、回収されない伏線があると非常に気になってしまう。

ラストのオチも全体の整合性を重視するあまりハッピーなんだかアンハッピーなんだか分からないオチになってたりするんですが、ま、いいんじゃないでしょうか。ちなみにこれは字幕で見ました。

主人公は僕だった

原題「Stranger Than Fiction」。今回見た映画の中では、僕はこれがもっとも面白かった。あらすじは公式サイトを参照していただくとして、いや、正直お話としてそれほど面白いと思ったわけでもないのだけれど、あちらこちらにツボがあったのです。

まず、ヒロインのアナ・パスカルが良かった。それも実は、日本語吹替えの声優さんが良かった<ヲイ(笑。飛行機の映画では吹替えさんの名前は表示されないので (ナニゲにヒドいよね)、帰ってからいろいろ調べてみたんですが、今のところまだ誰だか分からず。ちゃんとした大人の女性の声ながら、なんだか妙に甘い感じの、素敵な声なのです。うーん誰なんだ。総じてこの映画は、上の3本と比べると吹替えの声優さんがとってもマトモでした。ナイス。

次に、音楽が良かった。スタッフロールの時にかかっていた The free design というグループの「LOVE YOU」という曲が特に気に入って、帰ってくるなり Amazon でベスト盤をポチッとしちゃいました。主人公ハロルドが途中で歌う歌も素敵でした。

何となく DVD が出たら買っちゃいそうな勢い。それで日本語吹替えの声優さんが変わっちゃってたらショックだなー。

おまけ「BIG RIVER

オダギリジョー主演の「ロードムービー」だそうな。お尻の 10 分を見られなかったのだけど、たぶんそれほど大きな変化はないだろうな、という感じの映画。スタイリッシュ、と呼ばせたいのかもしれないけれど、どーもよく分かりませんでした。日本人とアメリカ人とパキスタン人である必然性もないし。クールな感じで描きたいように見えるのに、ストーリーが妙にウェットだったりするし。オダギリファン以外には見る必要ナシな映画、かも。

birdsarge から etch へ(2)

sarge から etch へ(2)

etch へ移行してから mrtg のグラフがうまく更新できていないようだったのでちょっと調べてみたところ、どうも /etc/hosts.allow の評価が微妙に変わっていた様子。
これまで localhost 等からの接続を許可するのに「ALL: LOCAL」のような書き方で OK だったのが、今のバージョンではどうも明示的に「ALL: 127.0.0.1」とか書く必要があるみたい。hosts_access(5) を見ると LOCAL でも OK なように見えるんですけどね…。謎。

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