「スティル・ライフ」
池澤夏樹さんの芥川賞受賞作なんだそうです。短篇〜中篇という感じの「スティル・ライフ」と「ヤー・チャイカ」の2作を収録。
スティル・ライフですが、まだ人生のモラトリアム期間を過ごす主人公が、少し謎めいたバイト仲間、佐々井と知り合い、ちょっとした出来事が起こるお話。
冒頭でいきなり読者に対して世界認識に関する根本的な話を伝えようとしていたりするところは、少しジュブナイルっぽかったりするのかもしれません。それが、「たとえば、星を見るとかして。」というところに落ちてしまったりするあたり、とてもロマンチックでもあり、可愛くもあり (そうなのよ。「理科っぽい話」って結構ロマンチックなのよ)。若い人、まだ世界と自分が未分化だったり、うまく折り合いをつけられない頃の人には結構指針となりうるお話なのかも。
池澤さんの本としては比較的最近の本「すばらしい新世界」に続いて2冊目ですが、「すばらしい〜」の書評に「初期の頃の叙情性は見られない」と書いてあった理由が少し分かったような気がしました。池澤さんの本も「文学」に自然に「科学」がとけこんでいる印象がありますが、同じく科学っぽい小説と言えるかもしれない保坂さんの本と比べると、特にこの「スティル・ライフ」はかなりロマンチックです。かっこつけしいとも言えるかもしれない。保坂さんの本はいろいろとかっちょわるいところがあるわけですが (しかしそれが魅力的なのだ)、池澤さんはずっとかっこいい。たぶんお話の中だけじゃなくてリアルでもかっこいい人なんだろうなぁ…と思いました。
僕としては「スティル・ライフ」よりも「ヤー・チャイカ」の方が面白かった。「ヤー・チャイカ」とは、人類初の女性宇宙飛行士ヴァレンチナ・テレシコワさんのコールサイン (「私はかもめ」という意味) なのだそうです。先端企業で働く一人娘と二人暮らしの主人公が、ふとしたきっかけで知り合ったロシアの人との交流を描くお話ですが、お話の構成、内容的にはかなり突拍子もなくてほとんど実験的な感じ。主人公の普遍的でも根源的でもない、極めて個人的なテレシコワさんへの想いに、僕も意外に共感しちゃったりして。
ちょっと訳あってしばらく池澤さんの本が続く予定。この本の次に「夏の朝の成層圏」(池澤さんの長編デビュー作) を読み出しましたが、なるほど、「初期の本は叙情性豊か」というファンの評判がよく分かるなぁコレ(笑。
結婚記念日
完全に忘れてたよ…。丸8年目にして初めてだ。あゆみさんに指摘されて気がついた。これでまた弱みが一つ増えた(笑。
UNIX USER の高林さんの記事を読みながら、wxWidgets と戯れる。MinGW (MSYS) と wxWidgets の組み合わせでごく普通に GUI アプリケーションが作れる。wxGlade のような GUI エディタもある。8年前にこれがあれば、今のように Java とかかわることもなかったかもしれないなぁ。今はフリーな開発環境がいろいろと充実してて良いですね。