越谷オサム著。静岡から東京の大学に入学し一人暮らしを始めた大学1年生の主人公、石黒寿史と、そのアパートの隣人でサークルの先輩、タマルの間のもろもろのお話。著者の前作「金曜のバカ」が短篇集だったので、長編としては「空色メモリ」以来ですね。空色メモリは高校生のお話でしたが、こちらは大学生、それも恋にサークルに勤しみ、単位を求めて汲々としているいわゆる世間的な大学生のお話。越谷さんは毎作新しい挑戦をするよう心がけているとどこかで読んだけれど、大学生の生態を描く、というのは確かに著者初、だったのかも。あまりに違和感のないお話なのでそもそもこういう話ばかり書いている人かと勘違いしてしまいそうですが、そこはこの話の一つの見所かなぁと思いました(えー)。
さて肝心のお話の中身ですが、今回も面白かった!僕としては寿史とタマル先輩の他愛ない日常が延々続くだけでも全然オッケーなんですが、そこはそれ、大方の読者の予想を越える事件(事件?)が起こります。「空色メモリ」もそうでしたが、ほのぼのした展開にのほほんと読み進んでいると、ちょっとびっくりするくらいの急展開するお話は、越谷さんの魅力の一つなのかもしれません。
ところで今回、主人公寿史の大学やタマル先輩と共に住む「せきれい荘」が高幡不動にあったり、調布や聖蹟桜ヶ丘、京王八王子、多摩都市モノレールに多摩動物公園など、まさに僕の地元が物語の舞台となっていたことは実に僥倖でした。おかげでそれはもうリアルに情景を想像出来、物語の臨場感もひときわでした。
この話を初め越谷作品を読んでいて思うのは、人との出会い自体が一つのミステリーなのだな、ということ。第一印象が良い人が必ずしも「良い人」とは限らない、逆に第一印象がひどくても長く付き合っているうちにとても好きになれる人もいるという、日々暮らしているとごく当たり前に感じていることに改めて気付かされます。それはとても刺激的でミステリアスな経験です。
ちなみに僕自身の大学時代は、理系学生の常で、実験とレポートに追われ、学費を稼ぐためのバイトに明け暮れる毎日で、いわゆるサークルに入って合宿に行って学祭盛り上げて、というような世間的な大学生活はほとんど経験しませんでした。まぁ高校時代が超濃密だったのでそれですっかり満足してしまっていた、というのも大きいのですけれど。ところでこのお話の主役の一人、珠美さんは「趣味はAVです!」と言い切るほどのガジェッターでPCもバリバリ使いこなす才媛なんですが、どうして理系に進まなかったのでしょうかね。ちょっと気になるなぁ。
むむ!?喉から胸にかけて圧迫的不快感&軽い咳…なんとなく風邪の前兆な気がするので、帰ったら葛根湯飲もうっと。 (18:02 twiccaから)
越谷オサム (@koshigaya_osamu) 著「せきれい荘のタマル」読了。今回も面白かった!ちょっと感想が長くなりそうだったので最初からブログに書きました>Digitune [memo] - 「せきれい荘のタマル」読了 http://t.co/FKWynBk (23:33 Tweet Buttonから)