birdエンジンの話

エンジンの話

去年から引き続きいまどきの車のことをいろいろ見聞きしていて、最近のエンジンはずいぶん進んでいるのだなぁと感心してしまいました。

アトキンソンサイクルのこと
トヨタ・プリウスのページやプリウスについて書かれた記事などを読んでいると、プリウスが積んでいる 1.5 リットルエンジンは普通のエンジンではなく「アトキンソンサイクルエンジン」というものらしい???なんだそれ?、と、Google 先生やいつもお世話になっている wikipedia で調べてみると、何でも「圧縮比よりも膨張比が高くなるようにして熱効率を改善した内燃機関」のことらしい。中でも特に、吸気バルブの閉止タイミングを早くしたり遅くしたりすることで圧縮比を変化させるエンジンのことを、ミラーサイクルエンジンというそうです1。そういわれてみると確かに、プリウスのエンジンは普通のレギュラーガソリン仕様なのに圧縮比 13.0 と非常に高く、これはつまり膨張比はまさにこの数値の通りだけれど、実際の圧縮比はアトキンソンサイクルにより低く設定されているということなのですね2。アトキンソンサイクルは熱効率がいい反面、膨張過程が長く高回転で回せないためか、絶対的な出力はどうしても低くなってしまうのだそう (プリウスのエンジンも 1500cc にしてはたった 58 77ps しか出ていません。ちなみにマーチ君の 1500cc エンジン版はカタログ上 109ps を発生します)3。現行エンジンではプリウスに搭載されているものの他に、新しいシビックに搭載されている R18A エンジンも低負荷時はミラーサイクル化するらしい。またもうすぐ発表予定の新しいエスティマ・ハイブリッドに搭載されるエンジンもアトキンソンサイクルとなることが決まっているらしい。
EGR のこと
「最近の話」ではないのかもしれないけど4、僕はこの間まで、「エンジンは新鮮な空気をたくさん吸い込んで理論空燃比で燃やすのが一番いい」と思ってたんですが、最近の市販車用エンジンでは必ずしもそうとはいえないのですね。新鮮な空気をたくさん含んだ状態で燃焼させてしまうと、酸素過多状態となって燃焼温度があがり NOx がたくさん発生してしまうそうで、そのために最近のエンジンでは、「EGR (排気ガス再循環装置)」なるものを備えて吸気に排気ガスを混ぜ、酸素濃度を下げることで燃焼温度を下げて NOx の発生を抑えていたりするらしい5。超希薄燃焼を行うディーゼルエンジン、ガソリン直噴エンジンでは特に重要なんだそう。そうそう、昔ほどリーンバーン (希薄燃焼) エンジンが流行らなくなってしまったのは、どうしても NOx の発生を抑えるのが難しく最近の排気ガス規制に対応するのが大変だかららしい。いろいろ難しいんだなー。

それにしてもこういうエンジンの効率向上、排気ガスクリーン化に対して血のにじむような努力が繰り広げられているのを見るにつけ、やっぱりエンジンを車のような用途に使うのはむいてないような気がしちゃうんですよねー。エンジンは定速で理想的な状態で回すのが一番なわけで、車のように時々刻々移り変わる出力を得るのには向いてないですよ。発電機、蓄電池、モーターの効率には限界があるとは言っても、作ってみたらいわゆる「シリーズハイブリッド (エンジンは発電機を回すだけで、実際の動力は全てモーターから取り出すタイプのハイブリッド車)」の方が効率が高かった、ということも大いにありそうな話だなぁ、と思いました。

シリーズハイブリッドの場合、モーターならではの回生エネルギーを再利用できることに加えて、発進停止や昇降に必要な出力の増減にエンジンが対応する必要がなく、エンジンは純粋に移動に必要な量のエネルギー (+発電機、蓄電池、モーターのロス分) を理想的な状態で産出すれば済むようになります。そうなるとなんでも、現在一般的な自動車に必要と考えられているエンジン出力の数分の一くらいでまかなえてしまうんだそうで、必然的に効率はさらに高まるでしょう。

どこかのメーカーが作ってみてくれないかなぁ。純粋な電気自動車が出てくるまでのつなぎとしてはとてもよいと思うんだけど…。

コメント

世・妹 (Sat, 07 Jan 2006 22:18:52)
全然関係ないツッコミですまねぇ。
や〜、ICOとワンダ、貸してくれてありがとう!!
ICOはもー白い子が穴に引きずられっぱなしです…。
ワンダはアグロ(馬)が言うことを聞いてくれません…。
私、アドベンチャーゲーム致命的に下手や…。

でもどっちも世界観がすごくスッテキー☆だねぇ。
曲とか曲とか効果音とか。セッツネー感じ。いいねぇ。
じんわり。

ICOは終わらせたいなぁ…ワンダも頑張ればなんとかなるだろうか…。
こういうのは「うまい人」にやってもらって、脇でワイワイいうのが
楽しい、っていうaruppaの意見は今更ながらに分かるなぁ。
少し時間がかかりそうだけど、貸しておいてくださいませ(@_@。
まいき〜 (Fri, 13 Jan 2006 22:06:25)
「アキラ」の金田のバイクって、シリーズハイブリッドじゃなかったっけ。
個人的にはエンジンの振動や音がなんとなく好きなので、モーターは微妙だなぁ。
環境に良くない&効率良くないのは分かってるんだけど。

電気自動車と言えば右京さんがテストしてるエリーカ。
380km/hも出るし、動力性能的にはほぼ文句ないレベル。
10年後の車市場は、今からじゃ想像付かない状態になってるかも知れないっすね。

話題から逸れるけど、二輪の空冷キャブ車は今年10月の排ガス規制強化でどうなるんだろう。
なくなっちゃやだな。
Digitune (Mon, 16 Jan 2006 23:02:13)
ICO とワンダ、楽しめているようで何よりです>世・妹
出来れば自分で頑張ってクリアするのが一番いいと思うけど (すごい達成感あると思うよ・笑)、もしギブアップならばいつでも手を貸すので言ってください。

おお、それは知らなかった>まいき〜
そういわれてみると確かに、「せっかくコイルが暖まってきたのによぉ〜」とかゆーセリフがありましたね。ただ逆に、テツオの「そうか、このバイクは12,000回転以下に落としちゃいけないんだ…うんぬん」みたいなセリフもあったような気がするんだけど、ってことはなにか、金田のバイクはシリーズハイブリッドながらバッテリーを積まずに発電機とインホイールモーターを直結、電気で駆動してるのはもっぱら 2WD やモーターのトルク特性による運動性能の向上が目当てで効率なんて完全無視!なのかも。
インホイールモーター駆動の 2WD バイク、というと、純粋な EV ながらヤマハが去年のモーターショウに出品した「DEINONYCHUS(ディノニクス)」がありますね。
http://www.sankei.co.jp/moto/2005/sep/kiji/yamaha_39show.html
これを EV じゃなくてシリーズハイブリッド化してスクーターライクなボディにしたらまんま「金田のバイク」になるのかも。
(Mon, 16 Jan 2006 23:45:27)
かろうじてバイクつながりな話題。
今日、一般的なアルミフレーム車椅子+小型モーター の
電動車椅子をデモさせてもらった。これがけっこうよかった
です。メーカーはヤマハ。
車重約25キロ(普通の車椅子は15キロ位)、バッテリーは
約2キロと小さく、予備を携帯もできる。最高時速は6キロで
早歩きくらい。フル充電で走行可能距離10キロ。
一般的な電動車椅子は30キロくらい走れるバッテリーを積んで
るそうだけど、これの売りは軽さと小ささ。それと左右どちらか
一方のタイヤ内側にモーターやバッテリーを集めてあるので
車椅子が折りたためる!置き場所に困らない。これは目からウロコ。

もともと車椅子は自転車メーカーが製造してて部品も自転車の
ものが使われてるそうなんだけど(福祉用具店さんの受け売り)
電動車椅子は車メーカーが作ってることがほとんどなんだって。

今回の商品はその中間かな。ヤマハってことで、バイクの技術が
応用されてるのかと。「チョイノリ」感覚…あれはスズキか。
ほんと、技術の進歩と、福祉業界への他業種乗り入れの広がり
にはびっくりします。
(Mon, 16 Jan 2006 23:50:16)
ヤマハのサイトに商品紹介あった。長文失礼。

http://www.yamaha-motor.co.jp/product/wheelchair/lineup/jw1/
Digitune (Wed, 18 Jan 2006 01:55:04)
ヤマハはそういう、「小さな EV」に積極的ですね>姉
今の自動車メーカーはガソリン車並みの航続距離や最高速度を持つ EV を目指す、という方向性が主流ですが、僕はヤマハのようなボトムアップのアプローチも面白いと思います。今の電池やモーターの技術を考えると作りやすいし、家庭用コンセントで充電できるレベルの電力量で十分移動できるくらいの小さなヴィークルなら、ユーザーにとってもきっと使いやすい。電動アシスト自転車に続くようなヒット商品が生まれると良いのだけれど。

  1. プリウスはアトキンソンサイクル、とよく言われていますが、実際はミラーサイクルそのものらしい。 ↩︎

  2. 通常のオットーサイクルエンジンでは、吸気行程はピストンが下死点に達したときに吸気バルブが閉じられる (つまり膨張比=圧縮比) のに対し、ミラーサイクルエンジンでは下死点の前や後に吸気バルブを閉じることで、たとえば 1500cc のエンジンなのに実質 1000cc 相当しか混合気を吸気しないことで実質的な圧縮比を下げ、ノッキングを防止しつつ膨張比を稼ぐ設計になっているそうです。 ↩︎

  3. ちなみに僕はこの話を聞いてようやく、何でディーゼルエンジンの効率が高いといわれているのかがわかりました。ディーゼルではノッキングの心配がないので通常のオットーサイクルエンジンに比べると圧縮比が高く設定でき、それゆえに理論的な熱効率が高い、ということだったんですね。しかも最近のディーゼルエンジンではインタークーラー付ターボチャージャーの搭載が常識化しているんだそうで、その効率はますます高まっているらしい。ヨーロッパではハイブリッドよりもディーゼルが好まれるのも納得。長距離の一定速度巡航走行ではハイブリッドシステムはほとんど効率向上に寄与せず、純粋にエンジンの効率が利いてきますからね。いくらアトキンソンサイクルエンジンとはいえ、最新のディーゼルにはまだ効率面で追いつけないのでしょう。 ↩︎

  4. wikipedia によると 1970 年代から導入された技術らしい…。 ↩︎

  5. Honda Fit の i-DSI エンジンのツインプラグも、大量の EGR がある状態で燃料をきちんと燃やすためにそうなっているのだそうだ。 ↩︎