「C A S S H E R N」
「C A S S H E R N」
「イノセンス」も見ていないのに1、紀里谷監督がどんな画を見せてくれるのかと、つい見にいってしまいました。
驚いたのは、終了が 24:20 というレイトショーなのにもかかわらず、若い人を中心に結構お客が入っていたことです。大コケするに違いない、と踏んでいた僕はちょっとびっくり。明日が休みだからかなぁ。こないだやっぱりレイトショーで見た「王の帰還」よりもいっぱい入ってた気がするけど、あの時は月曜の夜だったからかなぁ。しかし若いにーちゃんの集団、ってのはどうしてもうんちく合戦になってしまうんすかね、ときどき大きな声で解説や感想しゃべるのヤメレ (ジジ臭い>俺・笑)。
えー肝心の映画の内容ですが、僕はかなり楽しめました。ストーリーはイマイチ2ながら、紀里谷ワールド全開な映像が最後まで途切れることなく続き、2時間20分もある中3よく頑張って作ったなぁ、と。や、ほんとにスゴイパワーを感じました。大したこわだりようです。
紀里谷さんは画面の情報量のコントロールがうまいですね。これでもかーってくらい密度の濃い画面もあれば、わざと白黒、ノイジーにして情報量を減らし、見ている人の想像力で補完させる。そんなに情報量がいらない/予算的に盛り込めないシーンなのに無駄に情報量が多いといわゆる「ちゃちい」画面になってしまうわけですが、この映画は全編を通して監督の絶妙な情報量コントロールが冴え、一定のレベルの映像にまとまっていたように思います。邦画だとこの辺が結構イイカゲンで、結構いい出来だったのにワンシーンでガックリ、というパターンが個人的には多かったので、これだけでもかなりグッドかも。
こないだの「Avalon」でも思ったんですが、日本、という変化に富んだ自然を持つ国に暮らしているせいか、「複雑で落ち着いた画面」を見るとふっと心が落ち着くんですよね。モノトーンで人工的な (情報量の少ない) 画面をずっと見せられた後に、豊かな色彩を持つ複雑な画面を見せられると、それだけで心が弛緩するのが分かります。そういうところまでよく考えられているなぁ、と感じました4。
それから、そもそも「新造人間キャシャーン」というヒーローモノだからか、結構「男の子映画」っぽかったのも意外なポイント。導入部の雰囲気からもっとポエティックな映画なんだと思ってたら、「マトリックス」ばり、というと明らかに言い過ぎかもですが、結構派手なアクションシーン満載で、面白かったです5。人によってはそのコミカルさ加減に笑っちゃう (または馬鹿にされたように感じる) かもね。
見ていて微妙に違和感があったのは、編集、というかカット割りです。ストーリーの呼吸と微妙にちぐはぐに感じるところがあって (もちろん絶妙に感じるところもありましたが)、「流れるような」というような形容にはまだ遠い感じ。一生懸命解釈しようと頭を使わないと、ときどき「はれ?」と置いてかれることがありました。
ちなみに個人的ヒットは、上月博士の
「ふりかえルナ」
…辞世の一言がダジャレかよっ!と一人で吹き出しそうになってしまったのは内緒です。わはは。
ところで、宇多田ちゃんはこの映画を見て4回も泣いたそうですが、一体どこで泣いたのでしょう?一ヵ所は自分の歌が流れるところ、ということで自明なんですが、それ以外は「人が泣かないようなところ」で泣いたらしい。どこだろう?