bird出張映画評(2)

出張映画評(2)

さて、二本目はブラッド・ピット主演の「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」です。この映画って F.スコット.フィッツジェラルド1の短編が原作だったんですね。80歳を越える老人として生を受け、日に日に若返っていく一人の男の人生を描いた大河ドラマです。今年のアカデミー賞では「スラムドッグ$ミリオネア」と争ったそうで。
それなりには面白かったけれど…という感じ。そもそも「時と共に若返っていく」というファンタジックな設定は本質的に必要だったんだろうか、などと考えてしまう。普通に生まれてすぐ捨てられ、戦争や初めての恋愛などを経験しつつ、幼なじみの女性と結ばれ、そして別れ、しかし最後はその女性に看取られながら生を全うする平凡な男の一生を描いた物語だったとしても、十分楽しめたような2
ところで「日に日に若返っていく」とはどういうことか疑問に感じる人もいるかもしれませんが、若返っていくのは身体だけです。中身、精神は全く通常の人と同じように成長し、年をとっていきます。なのでなおのこと、どうして身体が若返っていく必要があったのか、と考えてしまうのです3
この作品と「スラムドッグ〜」を比べると、「スラム〜」が作品賞をとったのも頷ける感じ。
さて三本目からは復路です。地上波で放送していた東野圭吾原作の「探偵ガリレオ」シリーズの映画化で、直木賞受賞作でもある「容疑者Xの献身」を見ました。福山雅治主演。
ミステリーとしての意外性であるとかそういう部分はよくできていますし、何しろ堤真一の熱演がいい。完全に主役を食ってしまっています。この映画は、福山雅治主演、と考えるよりも、堤真一主演、と考える方がしっくりきます。物語上のキャラクターとしての魅力も、ガリレオ先生よりずっと上なんですから。ガリレオ先生なんてこの話じゃある意味どうでもいい感じ。
ただ、そんな堤真一の魅力に脚本・演出がついてこれていない箇所がいくつか見られたように思いました。あの堤さんのキャラが「僕のロジックは完璧」なんて言うのは明らかに不自然だし、雪山のシーンも全体から見ると変です。
あと、個人的に松雪泰子が苦手なのもマイナスだったかも。客観的に見ればいい演技していたと思うんですけれど…。
駅に着いたので今日はここまで。


  1. 「華麗なるギャツビー」で有名な人。 ↩︎

  2. 「ガープの世界」のように。 ↩︎

  3. プロット上、確かにその設定に依拠した部分はいろいろあるんですが、何となく別の形でも代替できるような気がしちゃうんですよね。「必然」とまでは感じられなかった、というか。 ↩︎