birdコインコロン

コインコロン

投入されたコインを自動的に振り分ける「コインコロン」というおもちゃ。記事では、

 「ピタゴラスイッチ」や「めざマシーン」でテレビでもお馴染みのルーブ・ゴールドバーグ・マシン。つまり、簡単なことをわざわざ複雑な仕掛けにして楽しむ装置だ。

と書かれているのですが、僕は全く別のものを思い出しました。

僕の祖父の家は中野にある印刷屋さんで、一階が工場、二階が住まいという家でした。今ではオフセット印刷が主流となり工場の機械もずいぶん様変わりしてしまっていますが、僕がまだ小さかったころ、工場には大量の活字と、大きな活版印刷機がありました。

活字による印刷 (活版印刷) というのは、壁にずらっと並べられた活字入れから一文字一文字活字を選び出して、小さなお弁当箱のような木の箱に並べて版を作り、それをインクをつけて紙にプレスする印刷機械にセットして行います。活字を探して版を作る作業は人手で行うので、昔は何人もの人がその版を作る仕事をしていたといいます。

そんな工場の片隅に、子供心にちょっとおもしろい機械がおいてありました。大きな丸い広場のようなものが左側にあり、そこからグルグルと坂道が上って、右の方に細長い高速道路のような道が続いています。高速道路のような道の左右 (丸い部分を左に見ると前後になります) には、小さな入れ物がいくつも付いていました。最初、僕は何のための機械なのか全然分かりませんでした。

そんなある日、いつもは止まっているその機械が、「ブー」という音を立てて動いていたことがありました。見てみると、丸い部分に積みあげられた活字が、自動的にずんずんずんずん坂道を上り、高速道路を通ってそれぞれまちまちの箱へ落ちていっていました。つまり、この機械は使用済みの活字の振り分け機だったのですね。長澤まさみがでている「ロボコン」映画でも出てきた振動推進1と同じ仕組みで活字を送り、高速道路部分の脇のガードレールにあけられた穴の大きさによって、自動的に活字を振り分けてくれる機械2。版を作った後、大量の活字を元の棚に戻す作業はきっととても大変だったはずで、それを補助するためのツールだったわけです。

子供だった僕には、活字たちが動き回って次々に流れていく様がおもしろくて、ずっと見ていたことを思い出します。この「コインコロン」は、まさにあのときの機械と同じ構造ですね (やっとつながった^^;)。というよりむしろほんとは、自販機のコイン判別機と同じ、というべきなのかな。

12/24 追記。久しぶりにあった親父がここを読んでいたらしく、直接コメントくれました。

あの機械は「込選機 (しらべてみたら込物選別機の略称らしい)」、といって、実際には活字そのものを選別するものではなく、活字の間に詰める込め物 (時間、行間を調整するための細かい金属片、木片?) を選別するためのもの。活字は印字面が欠けてしまったら使い物にならないので、そんな乱暴な扱いはしない。

オヤジのコメントより引用

なるほど〜。あれは活字を分けるものではなかったのですね。一つ勉強になりました。


  1. なんていうたとえではきっと誰も分からないに違いない(^^;。 ↩︎

  2. 活字にはいろいろな大きさがあり、活字の棚ではそれぞれ大きさごとに分類されています。 ↩︎